これからの課題は、夫がどう育児に参加していくか
私はこの1年、医局長を務めたこともあり、自分たちの職場環境について考える機会が多くありました。そのなかで、女性医師等の支援や男女共同参画の推進はとくに大きな課題です。全国の皮膚科医師は約4割が女性で、他の科と比べるとかなり高い割合です。しかも年齢が低いほど高く、30代では7割が女性です。ですから、女性が活躍しなければ、もはや私たちの仕事は成り立ちません。
北大病院の皮膚科も4割が女性で、産休や育休をはじめ子育て支援のシステムはかなり構築されており、現在はそれらを運用している、という状況です。育休が終わって復帰したあとも、当直を免除したり、外勤があってもお迎えに間に合うよう配慮したり、医局全体で「サポートするのが当たり前」となっています。
ただし、実際に子育て中、または子育てを終えた方に話を聞くと、早く帰るときは「申し訳ない、後ろめたい」と感じていたことがわかりました。お気持ちはよくわかりますが、それは「当然の権利」として遠慮せず、最大限利用していただきたいと思います。産休・育休、時短勤務などをカバーするには、当然ながらマンパワーが不可欠です。継続した人材確保のためには、研修医を育てる教育をきちんと行い、魅力的な医局であり続けることが必要で、私たちはそうした努力をコツコツと続けるほかはありません。
女性医師等の支援環境は、システム面はここ数年で急速に整いました。これは第1段階で、今後は次の段階として、「夫がどう参加していくか」が大きな課題だと思います。現在、皮膚科女性医師の配偶者の約8割は同じく医師ですから、男性医師がどれだけ育児を担うことができるか、にかかってきます。ですが、女性医師に聞くと「そもそもダンナは当てにしていない」というのが本音のようです。女性医師がいろいろなシステムを利用し、親などのサポートが受けられる場合は受け、何とかがんばる、というスタイルが大多数です。男性医師も理解はあるとはいえ、育休までとるケースは、私の周囲ではあまり見たことがありません。こうした課題は、社会構造から変える必要があると痛切に感じます。キャリアアップしたい女性医師が育児を家族とシェアしながら働ける環境づくりが今後必要だと思います。
かくいう私も、妻が同じ皮膚科の医師で、いま2人目の子の育休中です。私も少しずつですが、早く帰って子どもをお風呂に入れたり、寝かしつけたり、まずはできることを実行しています。これからも妻の負担だけが大きくならないように、希望するキャリアをあきらめることがないように、お互いの気持ちを確かめながら進んでいこうと思います。
北海道大学病院 皮膚科 助教
氏家英之先生