カンペキでなくても、今できることを続けよう!
これまでの自分をふり返ってみますと、いつも綱渡り状態で進んできたような気がします。その時々に自分ができることを必死にやってきた感はありますが、周囲の皆さまに背中を押して頂き、引っぱり上げて頂いたお陰で今まで仕事を続けてこれたのだと思います。子育てしながら仕事を続けるのはもちろん大変ですが、メリットもたくさんあります。育児だけでなく、介護をしている方など、皆それぞれに様々な都合があり大変なこともあるかと思います。
でも、その時々社会や組織に貢献できるように精一杯努力して、あとは自分が役立っていると信じ、時にグチをこぼしても仕事を続けられたらいいのではと思います。
私は、歯学部を卒業後に外科医の夫と結婚し、北大病院の第2口腔外科で7年間、臨床医として勤務しました。当時は子どもがいなかったこともあり、毎日仕事中心で暮らしておりました。その後、教授の勧めもあり大学院進学を決め、現在も続けているがん研究に出会いました。博士号を取得後、臨床に戻り、双子を妊娠・出産後、産休を経て臨床医として働きました。
しかし、子どもたちが1才になる頃転機が訪れました。夫のハーバード大への留学が決まり、家族皆で渡米したのです。あちらでは夫と同じラボで4年間ポスドクとして研究生活を送りました。子どもたちを保育所に預け、夫と2人3脚で何とか研究と子育てを両立できました。ラボには似た境遇の研究者もいて、保育所に迎えに行った後お互い子どもをラボに連れてきて、子ども同士が遊んでいる間に実験したことも度々でした。
6年前に帰国し、北大に戻りました。夫は外科臨床に復帰しましたが、私は歯学研究科で助教として勤務しました。その後幸運にも特任准教授として口腔病態学講座・血管生物学教室を開設することができました。現在さまざまなバックグラウンドをもった教室員たちと一緒に、血管の多様性に関する研究を進めています。
以前、まだ子どもが小さいときに仕事をやめようか悩んだ時期がありました。そのとき、ボストンで先輩研究者にこう言われたことがあります。
「子どもはいずれ大きくなる。今やめたら、0%だよ」と。
自分の仕事のペースがたとえ今は60%だとしても、10年後、15年後、また100、120%になればいい、だから今はやめずに頑張ろう、今自分にできることを精一杯やって自分の経験を生かそう、と思いました。これから活躍される女性医師の皆さまにも、いろいろ悩みすぎず、さらに、自分で決めたあとは精いっぱい明るく進んでいただきたいと思います。
北海道大学大学院 歯学研究科 特任准教授
樋田京子先生