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「2022.3.7 北海道大学病院男女共同参画推進室講演会 ダイバーシティとアンコンシャスバイアス」終了報告

2022年3月7日 当院呼吸器内科 古田 恵先生、旭川医科大学皮膚科学講座 山本明美先生にご講演をいただき、ディスカッションタイムには歯学研究院 口腔病態学分野 血管生物分子病理学教室 樋田京子先生にディスカッサントとしてご参画賜りました。

古田先生からは本学医学部生に実施したダイバーシティに係るオンラインアンケート結果を一部ご紹介いただきました。結果として、女性医師が育児のため離職することに関して男女間で認識の差はなく、個人の自由であるという認識が多く、自分の進路へ結婚・出産・家庭生活・育児の影響は男女ともに影響するという回答が多い一方で、管理職志向に関しては女子学生で低い傾向がありました。育児・家事・介護の役割の認識は乳児期の育児は女性の役割と認識される傾向がありました。またジェンダーギャップに関する点は世界の中での日本の低迷を男性・女性ともに考える一方、北大内の女性教員数を問題視する意見は女性と比較し男性で低く、このジェンダーのおける差は今後の教育・職場環境整備を考える上で重要な観点と思います。ディスカッションタイムには個人の人生という観点とともに一度志した道であるため、ペースダウンをしながらでも継続するという選択肢の価値が挙げられておりました。

山本先生からは皮膚科領域の女性研究者に関する検討を通し、世界の中の日本の位置づけ、評価、ならびに本邦のジェンダーギャップについてご講演いただきました。2008年から2017年内に発表された皮膚科領域のトップジャーナルの掲載論文の筆頭著者の50%は女性である一方、国家間格差は大きく、日本は女性の割合が最下位であり、社会文化的環境が影響していると考案がありました(BMJ Open 2018)。ダイバーシティの観点から女性比率を30%以上に増やすという目標値が掲げられる意義としては働きにくい環境への理解、能力以前に女性であることが注目されて本当によい人材が見逃されることの抑止、若手女性へのロールモデルの提示をご紹介くださいました。米国皮膚科学会雑誌に2018年受理された米国の大学に属する皮膚科医のscholarly productivityに注目した論文と日本の現状をJ Dermatol Sci誌に発表した論文(※)の結果では、アカデミックポジションに就く女性の割合は職位が上がるほど低下する。その背景として業績(h-index)は本邦でも米国同様男性が有意に高く、一方、准教授以上という層別化解析では男女差は認めない。講師以下ではm-index(キャリア年数で補正したh-index)を用いても女性が有意に低かった。h-indexで層別化を行うと9未満では多変量解析において男性であることが昇進に寄与する因子として有意であるが、その傾向はh-index9以上の群では認められませんでした。以上のことから助教・講師において男女の業績の差が存在することについて、組織・学会の認識・考えを示していく必要性をお話いただきました。

お二人の先生からは、大変示唆に富むご講演をいただき、樋田先生からは歯学部生のアンケート調査内の男子学生のコメントを共有いただき、突然のご指名にお応えいただきながら、充実したディスカッションタイムも皆様のお力で実現できました。

性別のみならず、さまざまな背景を持つ医療者がそれぞれの能力を発揮し、よりよい職場環境で働くことができるよう、みなさんと考えて行く場を作っていきたいと思います。

 

  • 引用文献

Gender disparities in academic dermatology in Japan: Results from the first national survey.

Kishibe M, Saijo Y, Igawa S, Maruyama A, Tamagawa-Mineoka R, Nishida E, Higashi Y, Komine M, Tada Y, Aoyama Y, Hide M, Ishida-Yamamoto A.

J Dermatol Sci. 2021 Apr;102(1):2-6. doi: 10.1016/j.jdermsci.2021.01.011.

 

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