仕事は「続けること」を基本に、そのためにどうするかを考えよう
私は大学院で予防医学を専攻し、ずっと公衆衛生・疫学分野で研究を続けてきました。特に大きな関わりをもってきたのが、名古屋大学の青木國雄教授(当時)が開始された「JACC Study」と呼ばれる研究で、約12万人の一般の方々の協力を得て、日本人の生活習慣が癌などの病気とどう関連しているかを明らかにしています。公衆衛生の目指すところは、すべての人々が社会の中でその人らしく生活できることで、社会医学系の一分野です。
こうした社会医学系を含む基礎的な研究分野は、どちらかというと自分のペースで研究が進められるので、女性が長く働きやすい環境にあると感じます。私自身は、夫と4人の子どもたちの支えがあり、周囲の理解があって何とかやってきました。子どもたちはそれぞれ保育園や学童保育に通って、元気に育ちました。子育てに夢中になっていたころを振り返ると、子どもたちが可愛いかった時期を、もっと楽しめばよかったかなとも思います。今は3人が大学に進み下宿生活をしています。この春から私だけが札幌に来たので、夫と下の高校生の息子が2人暮らしです。子どもたちはみなだいぶ大人になって、こうして離れてみると、とても優しくなった気がします。
医学部に入った皆さんには、まず、仕事を途中でやめずに、ずっと続けることを基本に考えてほしいと思います。事情があってそうできない場合がでてくることもあると思いますが、あなたが医学部に入学したことで、ほかの誰かが入れなかったわけですから、その可能性を大切にしていただきたいと思うのです。そして、仕事を続けるためにどうすればよいか、という方法を考えてみてください。続けていける道を選ぶことも大切です。これは、最初に進む分野を決めるときだけでなく、「行き詰まったときに考え直す」ことも含めて。
自分が働きやすい環境を整えるには、たとえば、周囲の協力を得られるように、一生懸命がんばるところはもちろんがんばる。でもあまり周りに気を使って遠慮しすぎても、上手くいかないことがたくさんありますから、そこは別の時間にカバーするとか、違う役割で協力するとか、バランスをとりながら進んでいっていただければと思います。それから、働き続けることを理解して、協力してくれるパートナーを選ぶこともとても大事です。
医学の世界には、優秀な女性がたくさんいます。女性だからと肩ひじ張らずに、でも責任とやりがいを持って働くことができる社会になることを願っています。これからの皆さんの活躍を期待しています。
北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座
公衆衛生学分野 教授
玉腰暁子先生