各診療科における男女共同参画への取り組み紹介

 乳がんは女性で最も罹患数の多い悪性疾患であり、罹患数は年々増加しています。単一臓器を診療する診療科ではありますが、乳腺外科医が、予防から診断、外科治療、薬物療法、緩和まで一貫として行い、多職種との連携も必要とされ、大変やりがいのある分野です。

 乳腺外科は平日日中は診療業務は大変忙しいですが、夜中や休日などの緊急の呼び出しなどはほとんどなく、計画的な働き方ができるのが特徴です。診療が必要な患者さんは数多く、大学病院やがんセンター以外にも一般病院、クリニックなど将来働く場所に困ることはありません。乳がん検診など特に女性医師が求められています。

 これまで、乳がんの診療に興味を持っていても、外科学講座に入局するのは躊躇していた研修医の皆さん、令和4年1月より髙橋將人が教授として着任し新体制となりました。ぜひ、乳腺外科を自分が生涯をかけて選択する診療科の候補として考えてみてください。

 出産、育児などでの休職や、短時間勤務などには随時対応いたします。たとえ、週に3日しか働けなくても、あるいは、午前中しか働けなくても、そのときに外来や手術、検査などに携わることによって医療の進歩に遅れずにいられます。実際本年この男女共同参画推進事業のすくすく育児支援プランを利用して北大病院で短時間勤務をおこなっている女性医師が乳腺外科にはいます。

 皆さんの成長を乳腺外科みんなで支援していきます。困った時はお互い様ですというのが乳腺外科教室の考え方です。ご相談だけでもいいので、少しでも興味があれば乳腺外科教室をメールでも電話でも直接いらしても、何でもいいのでお気軽にお訪ねください。

乳腺外科のホームページ

http://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~breast-w/

乳腺外科 科長

高橋 將人

最近の乳腺外科領域における発展

ガイドラインは数年毎に改訂されており、本年は改訂年でありまだ発売されていないため詳細の記載は現状できないが、保険診療の流れが変更されてきている分野について説明します。

乳がんの5-10%は遺伝性であると言われており、父方または母方から受け継いだBRCA1または2という遺伝子の病的バリアントを有する場合は遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断されます。5%の乳がんが遺伝性であると仮定すると本邦で10万人の新規に発生した乳がんの中で約5000人がHBOCということになります。

HBOCの場合の救命の方法としてリスク低減手術があり、対側乳房のリスク低減手術が保険適応になり乳房再建手術を希望される方も多いことから、形成外科との連携が重要になります。また乳がんよりは頻度は少ないですが、卵巣がんは予後が不良のため、婦人科と連携しリスク低減卵巣卵管切除術を考慮する症例もあります。

BRCAはDNAの二本鎖修復に関わる機能を有しています。HBOCの乳がんは二本鎖修復が障害されていることを利用して一本鎖修復に関わるPARP阻害薬オラパリブを投与することで、HBOCの方に発症した乳がんを制御できます。現在転移・再発乳がんに対して保険適応となっています。一方、術後アジュバントの有効性を検証したOlympiA試験で1年間のオラパリブの服用が再発抑制効果を証明したため、保険適応を含めて今後の標準治療となることが予想されます。