医師の仕事を続けるには、周囲のサポート+仕事への情熱が大切。
私は、研究者の夫と6歳の娘がいます。大学院を卒業後、病理部に勤務して、現在も続けています。休職したのは産休期間だけで、ありがたいことに周囲の温かいサポートのおかげでやってきました。仕事を続けていく上では、特に3つのサポートが重要でした。
1つめは職場の理解とサポートで、子育てにつきものの突発的なアクシデント(特に発熱です)に理解があり、状況に合わせて対処できることです。これは非常に大切な環境ですが、残念ながら自分で切り拓いて手に入れるのが難しいと思います。もし、これから医療の道に進む方は、またその仕事を一生続けたいと思う方は、子育てや家庭生活に理解のある職場を積極的に選ぶことが重要だと思います。私が病理部を希望したのは、ここでなら仕事が続けられると思えたこと、そして、この仕事ならずっと情熱をもってがんばれる、と思ったからです。
子どもが小さいうちは、遅くとも夜7時には自宅に戻り、子どもをお風呂に入れて寝かしつけなければなりません。でも、それでは仕事が終わりません。自宅に持ち帰れない仕事は、夫と相談の上時間をお互いに融通し、娘が寝た後に再度病院で顕微鏡をのぞくこともありました。それでも、やりがいを感じ、情熱が持てる仕事なら乗り切れると思います。また、そういう仕事を選ぶことが大切です。
2つめは家族のサポートです。これは夫も同業者なので状況はわかってくれますし、積極的に協力もしてくれます。また同居はしていませんが、同じ札幌市内に両親がいて、何かと手伝ってくれます。それと、なにより助かっているのが、娘がすくすく元気に育ってくれること。これは非常にありがたいです。3つめは保育施設の充実で、ちょうど娘が生まれたころから、北大病院に24時間体制で無休の附属保育園ができたことが大きな存在でした。先生方もすばらしく、娘はここでお箸の持ち方も教えていただきました。本当にいろいろ感謝しています。
自分が「やりたいこと」と「やり続けられること」は必ずしも一致しないこともあります。そのバランスを考えて、自分が納得できるように生活することができればいいですよね。せっかく6年間勉強して医師になったのですから、ぜひそのキャリアをどんな形であっても続けてほしいと思います。私も、これからも一歩一歩着実に、自分の道を進んでいこうと思います。
北海道大学病院 病理部 助教
畑中佳奈子先生