外科医のキャリアと女性としての生き方は両立できる!
野口先生:2年間の初期臨床研修を終えた後、外科医を志し消化器外科Ⅱに入局。引き続き2年間の後期臨床研修に入りました。当初は、その後大学へもどり大学院へ進学する予定だったのですが、後期研修の最後の年に結婚することになり、医局のプログラムを延長して主人の勤務地である函館の病院へ移りました。平野先生がプログラムを変更してくださったおかげで、外科医として勤務しながら出産・産休・復帰までを経験することができたのです。今年4月に家族三人で札幌へ戻り、大学院へ進学しました。
平野先生:外科医が一人前になるまでには10年ほどかかるのですが、女性の場合、その10年の間に結婚や出産といったライフイベントを迎えることが少なくありません。家事や育児をこなしながら外科医としてキャリア形成していくのは非常に難しく、若手女性医師が飛び込むにはハードルの高い分野です。しかし、野口先生はこれからの外科部門を担っていく有望な人材。本人の意欲に応えるためにも、医局や関連病院などが積極的に支援していくことが必要だと考えました。
野口先生:函館の病院は女性医師の支援体制などが比較的整っていたので、安心して働くことができました。それもよりも迷ったのは復帰のタイミングです。あまりブランクをあけない方がよいと判断し出産後半年で復帰しましたが、産休前と同じように働けないことは分かっていたので本当にやれるか不安もありました。でも、周囲の方々がきめ細かくサポートとしてくださったので、スムーズに現場復帰できたと思います。その分、就業時間中は自分のやれることを精一杯やろうと思い、細々した事務的作業や、オーダー業務などを自分から進んでやるようにしていました。慣れてきたら体の負担の少ない仕事から始めて、徐々に本格的に外科医として活動をはじめていきます。
平野先生:できるだけ早い段階で復帰し、フルに働けるようになるまでサポートしていくにはどうすればよいか、病院の方にもいろいろ考えていただきました。結婚と出産のために研修期間を2年延長したのは当医局では初めてのケースであり、病院にとっても女性外科医の産休・復帰を実現した最初の事例となりました。この間のプロセスは、外科を志す女性医師にとっての大きな道しるべになると思います。
野口先生:最初は不安でしたが、思い切って平野先生にご相談したところ、医局や関連病院の方々の温かい協力を得て、貴重な2年間を過ごすことができました。外科医として確実にステップアップしながら、結婚も出産も諦めずに20代を過ごすことができることを、多くの女子医学生や研修医に知ってもらえたら嬉しいですね。
北海道大学大学院医学研究科・消化器外科分野Ⅱ
医員(博士課程)
野口美紗先生
教授
平野聡先生