応援メッセージ

長 祐子先生

医師として働き続ける皆さんに期待しています

私が医学部を卒業したころは、女子医学生がまだ1割ほどと少なく、診療科によっては面と向かって「女はいらない」と言われる時代でした。そのようなこともあって私自身は「いかに医療現場で自分の存在価値を認めてもらえるか」を考えながら、とにかく仕事を続けることに集中してきたと思います。

現在は女性医師の数が増え、働き方に多様な価値観が生まれました。フルタイム勤務を続ける医師も勿論いますが、育児との両立のため外来だけを担当したり、時間を短くして働き続ける医師も増えています。病院ではなく行政の道に進む医師も少なくありません。忙しい市中病院では、どうしても日当直をこなせるフルタイム勤務医を求めますので、時短で働きたいと希望する女性医師の受け入れが悪く、とてもそんな働きかたはできないと感じて辞めてしまう場合も少なくありません。当科では実際のところ2極化が進んでいます。バリバリとはいかなくても中間くらいの働き方の女性医師がもう少し増えると、これから出産を控えた女性医師も「これくらいの感じならできるかな?」と自分の将来像が描きやすいのではないかと思っています。勤務形態の多様化は現在は育児中の女性医師に偏ってみられる現象ですが、他の女性医師にとっても、また男性医師にとっても、個人の状況に合わせて様々な働きかたを認めてほしいという思いは同じではないかと思っています。雇用する施設側もこういった価値観の変化を認識して、良い意味での格差を設けたうえで様々な勤務形態を受け入れ、医師の数を減らさずに上手に利用しなくては医療全体がまわっていかない時期にきたのかもしれません。

長 祐子先生

一方で育児を理由に女性医師には少々許されすぎている部分がある印象は残念ながら否めません。管理されるほうも、するほうもそこを踏み間違えるとお互いに辛い状況に陥ります。「ふだん一生懸命やっていれば、あなたが困ったときに周りはきっと助けてくれる」とは私が学生のときに大先輩から聞き印象に残っている言葉です。育児中であっても、何かもう少しできることはないか考えてみる、努力してみるということは大切なことだと思います。
専門職というのは、長い時間をかけて養成され、本来、社会への奉仕色が濃いとされる職業です。皆さんの替わりは簡単には補充できませんし、常に社会に求められているということです。

私はこれまで同じ小児科医である夫と娘たち、周囲の理解に恵まれ、なんとか働いてきました。今思い返せば大変なことも色々ありましたし、心ない言葉を聞くこともありましたが、先輩女性医師の背中を見ながら働き続け勉強し続けて来たことで医師としての世界が拡がりました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。自分の経験を活かして、後輩女性医師のために何かできたら、とささやかですが活動もしています。どんな形でも良いので辞めないで続けてほしいですね。多くの患者さんが皆さんの力を必要としているのです。

北海道大学病院小児科 助教
長 祐子先生