応援メッセージ

自分のなかで優先順位をつけ、時間をつくる

自治医科大学総合医学第一講座放射線科 教授
真鍋 徳子先生からのメッセージ

留学から戻り、臨床・研究・教育、そして子育ての日々

私は放射線診断専門医を取得し、大学院に進学してからサブスペシャリティとして循環器の画像診断をやろうと考えました。しかし当時の北海道には学ぶ場所がなく、それなら思いきって世界の最先端の研究室に行こうとハーバードメディカルスクールで3年間、心臓MRIの研究に携わりました。
海外経験のなかった私は英語も下手で、放射線科とは別の循環器内科に留学したため、研究のアプローチも全く違い驚くことばかりでした。そこで間違っても当たり前と開きなおり、研修医に戻った気持ちで一から勉強して多くのことを吸収できました。

帰国後は、学んだことを生かすべく技師さんの教育に力を入れ、勉強会を開き、教科書を書き、講演などもたくさん行いました。その結果、北海道でも循環器の画像診断が大きく広がったと思います。いまから10年以上前のことです。当時は診断専門医の数が少なく、「北海道中の心臓画像をすべて読む!」くらいの気持ちでやってきました。

帰国したのが2007年、その後結婚して2013年に出産し、育休2ヵ月で復帰しました。体力的にかなりきつく、毎日どうやって生活していたのか、ほとんど記憶がありません。いちばん辛かったのは睡眠時間が取れないことです。すごく夜泣きをする子で、夜は夫と前半後半で起きる係を分担し、一人が起きてもう一人は寝るというように交代で睡眠時間を確保するようにしました。
それから、通勤時間を短くするため、平日は病院近くにマンションを借り、土日は実家近くの自宅と行き来し、何とかやりくりして3歳まで切り抜けたという感じです。
妊娠中は切迫早産で2ヵ月寝たきりになったり、産後は顔面神経麻痺を発症したり、いろいろ無理もして主治医や周囲のみなさんにはご迷惑をかけました。耐性がついたのか、あの寝れなかった日々に比べれば大抵のことは我慢できます(笑)。

周囲に感謝しながら仕事で還元していきたい

これから活躍する若い人たちには、自分のなかで優先順位をしっかりと決め、そのためにどう時間をつくるか、どんな方法があるかを考えてほしいと思います。優先する事柄は、育児でも仕事でも、その人や時期によって違うでしょう。
仕事をメインにしたいと思うなら、家族や周囲の理解が不可欠です。いつも周囲へ感謝の気持ちを忘れず、それを上回るくらいの仕事で還元するのが重要だと思います。「そこまでするなら、サポートしてもいい」と思ってもらえるような結果を出すことです。
ライフワークに巡り合えた幸せをかみしめ仕事を続けていけるといいですね。

お金で解決できることは、そうするのもいいと思います。たとえば、私は保育園のお迎えはすべてファミリー・サポートに依頼しました。家事は、便利な家電をフル活用して徹底的に効率化しています。子どもと過ごす時間は他の人より少ないかもしれませんが、それを必要以上に後ろめたく思わなくても、しっかり愛情を示すことで子供は育っていきます。(ただし、運動会など特別なイベントのある休日は仕事を入れず死守しました。)

自分のやりたいことを全力でやっていると、いつの間にか1段上のステージに上がっていて、もっと楽しくなり、次の目標が見えてきます。今そう思えるのも、周囲に支えられながら、自分にできる仕事を真摯に続けてきたからだと思っています。

自治医科大学総合医学第一講座放射線科 教授

真鍋 徳子先生
(2020年1月まで、北海道大学病院放射線診断科に診療准教授として在籍)