自分の好きなことを信じて前に進もう
北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室 准教授
山崎 美和子先生からのメッセージ
解剖学が教えてくれたこと
医学の道を進む人たちには、他人の評価や流行に流されず、自分の好きなことを選んでほしいと思います。若いころは将来の悩みや不安が多いと思いますが、「だいたいのことはどうにかなる」と思って大丈夫。いつでもやり直しできますから、ぜひ自分の判断に自信をもって前進してください。
私は北大医学部2年生の神経解剖学で脳の構造を勉強し、これは面白い!と衝撃を受けました。それから脳の研究をしたいと考え、当時選択肢は複数ありましたが、一番興味をもった解剖学教室に出入りするようになりました。昔から機械を分解するのが好きで向いていたのかもしれません。
その後、論文を書いたり学会で発表したりする機会などもあり、ますます研究が面白いと思うようになりました。学生が勉強する解剖学は覚える内容が多く難しいと感じる学生さんもいますが、そんなことはありません。人間の身体の番地のようなもので、地理の勉強に近い部分もあり、暗記ではなく機能と位置関係を包括的に理解すると難しくないと思います。
大学院では電気生理学も学んでみたいと思い、金沢大学大学院に進学しました。そこですばらしい先生方と出会い、新しい経験ができたことは今も大きな財産です。博士号の取得後、やはり自分は解剖学の方が好きなのではないかと迷っていた時、現在の解剖発生学教室の教授から声をかけていただき、北大に戻ってきました。
自分が得意なことは不思議と魅力的に思えないもので、価値がないと考えがちではないでしょうか?私の場合、それが解剖学でした。しかし他の人にとって必ずしも簡単ではないと気が付き、得意で好きなことを仕事にしようと思いました。私は大好きな解剖学の分野で、教育も研究も行うことができて、本当に幸運だと思っています。
周囲への感謝を忘れずに
社会に出て仕事を始めると、一生懸命がんばるタイプの人と「ほどほどでいいや」と思うタイプの人がいると思います。一生懸命な人には仕事が任せられ、期待も集まります。もちろん素晴らしいことですが、「私はがんばっているのに周りは全然やらない」「自分だけが忙しい」と思ってしまう人もいます。突然不満を爆発させ、仕事を辞めてしまうなど、極端な選択をする人も少なくありません。しかし、どんな仕事も自分一人ではできません。上司や同僚、家族をはじめたくさんのサポートがあることを忘れず、感謝の気持ちを大切にしてほしいと思います。
出産や育児などで思うように働けない時期もあるでしょう。でも状況に柔軟に対応し、仕事を続けることをお勧めします。「案ずるより産むが易し」とは良くいったもので、たいていのことはどうにかなりますし、子どものいる生活はかつて想像していたよりも遥かに楽しいです。子どもが4歳のときには、当時同じ研究室にいた夫と一緒にイエール大学医学部に留学する機会を得て、家族で1年間楽しい海外生活を体験したのも良い思い出です。若い人たちには、そのときどきの環境を受け入れ、人生を楽しんでほしいと思います。
北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室 准教授
山崎 美和子先生