応援メッセージ

新しいステージで活躍する仲間をお待ちしています

北海道大学病院呼吸器外科 教授
加藤 達哉先生からのメッセージ

加藤 達哉先生

「研究マインド」を忘れずに

インタビューを受ける加藤先生私は学部卒業後、当時の第二外科に入局していろいろな臓器を経験しましたが、研修中、日本で最初に胸腔鏡手術を手がけた森川利昭先生の肺がん手術を札幌南一条病院で見学し、「これはすごい!」と衝撃を受けました。従来は胸を大きく切開する手術がほとんどでしたが、これからは胸腔鏡を使った身体にやさしい手術が主流になると思い、それが呼吸器外科を選んだきっかけの一つでした。もう一つは学生時代に祖母が肺がんになり、手術ができず亡くなったことです。胸腔鏡のような手術なら、高齢者や合併症などのある患者さんにも可能性が広がります。ぜひこの道に進みたいと思いました。

その後、森川先生がいらっしゃった南一条病院は肺がんに特化した札幌南三条病院となり、私も2006年から約5年半、呼吸器外科医として勤務し、月曜から金曜まで毎日手術をしました。「世の中にこんなに肺がんの人がいるのか」と思うほどでした。ここで多くの経験を積み、患者さんからも信頼していただけるようになったと感じます。最初は患者さんに手術の説明をすると「先生がやるんですか?」と言われていたのが、いつの間にか「先生に手術してもらえるんですか?」に変わっていました。手術後、患者さんたちが元気な笑顔を見せて帰っていく姿が何よりもうれしく、みんなそのために頑張っていると思います。

私が若い先生たちにいつも言っているのは、そうした忙しい日々でも「研究するマインドだけは忘れないで」ということです。臨床のなかで「この治療法で本当に良いのだろうか?」という疑問が必ず生じるはずで、それに向けて探究し続ける気持ちを大切にしてほしいと思います。そのため私たちの教室では月1回リサーチカンファレンスを実施し、各先生が研究テーマについて発表し、活発に意見交換をしています。

「北海道での肺移植実現」に向けて

デスクに座る加藤先生2022年に独立した診療科としてスタートした私たちのテーマは、単孔式胸腔鏡手術やロボット手術を中心とした「低侵襲手術」と、治療の難しい肺がんに対する抗がん剤や免疫治療、放射線治療を組み合わせた治療の開発です。

それから、「北海道での肺移植の実現」が大きな使命であると考え、10年ほど前から準備を進めてきました。当時、循環器・呼吸器外科の教授だった松居喜郎先生に「肺移植を学ぶためトロント大学に留学したい」と伝えたとき、「そうか、北大のために行ってくれるか」と激励されて、とてもうれしかったことを覚えています。

肺移植のメッカであるカナダ・トロント大学で、2013年から2年9ヵ月リサーチフェローとして学び、2016年の1年間で多数の肺移植手術の経験を積みました。若い先生たちも共感してくれて、私の後すでに2名がトロントで学び、新しく教室に入ってくる若者も「肺移植をやりたい」という人が何人もいます。また、肺移植施設の認定には移植医療に関わるスタッフが道外施設で研修を受ける必要がありますが、2023年3〜4月にクラウドファンディングで呼びかけたところ、多くの方々が支援してくださり、研修の資金に充てることができました。いよいよ北海道初の肺移植施設認定が目前に見えてきました。これからが本当のスタートです。

胸部CT検診の普及などにより、肺がんの患者さんは年々増加し、呼吸器外科の役割は今後も大きくなっていくでしょう。また、呼吸器外科は緊急の呼び出しが比較的少ないこともあり、女性医師も活躍しやすい診療科だと思います。現在、関連病院の呼吸器外科医として子育て中のママさん医師が勤務していますが、お子さんが小さいうちは時短勤務もあり、その分をカバーするため派遣医師を増やすなど協力体制をしっかり作るようにしています。みんなが働きやすく、風通しのよい環境を整えることが私の役目だと改めて感じます。私たちと一緒に、新しいステージで活躍してくださる仲間をお待ちしています。

北海道大学病院呼吸器外科 教授

加藤 達哉先生