応援メッセージ

単身のアメリカ留学で、家族の大切さに気づきました

以前の私だったら、ここにメッセージを寄せることなど到底できなかったと思います。子育てや家庭を大事にしていなかったわけではありませんが、どうしても自分の仕事をメインに考え、余った時間を家族のために使っていたからです。

私と妻は北大医学部同士で、研修医2年目のときに結婚しました。2人の子どもに恵まれ、妻もずっと医師として働き続けていたので、私も保育園の送迎をするなど、自分としては「ちゃんとやっている」と思っていました。でも、それは自分だけが思う「やっているつもり」で、妻はそう思っていなかったと思います。

上の子が小学校に入学するころ、カリフォルニア大学へ整形外科リサーチフェローとして留学することになり、単身アメリカに渡りました。ずっとやりたい研究だったこともあり、妻も応援してくれました。そんな中、たまに休暇をとって日本に帰ると、少し離れている間に子どもたちが大きく成長していることに驚きました。それと同時に、小学校で授業に馴染めず、よく保健室に行っていることを聞き、とても心配になりました。休暇が終わってアメリカに帰る日、子どもがひどく寂しそうにしているのを見て、このときやっと家族の大切さを身に染みて感じました。

そう思って周囲を見てみると、カリフォルニアの同僚はみな家族との時間を大切にしていて、夕方は全員が定時に帰り、土日に出勤する人など皆無です。「家庭は仕事の次」が当たり前と思っていた価値観が、自然に変わっていきました。1年半の留学を終えて札幌に戻ってからは、気持ちも生活も大きく変わりました。妻からも「変わったね」と言われます。

仕事はもちろん大事ですが、家族との時間を後回しにする行動パターンはもうしないようにしています。大学病院の仕事は限りなくあって、仕事を全部片付けてから家族に向き合おうとすると、全く時間が残っていません。ですから、病院での仕事は夕方までに集中して終わらせ、北大病院の保育園に預けている下の子を迎えに行き、だいたい7時には帰宅することを目標にやっています。自宅でできる仕事は夜に自宅で行い、事務的な作業は朝6時に出勤してやったほうがずっと効率が上がります。子どもたちと一緒にご飯を食べ、お風呂に入って布団に入れて、そうすることが自分の仕事の励みになることもわかりました。

また、いつも気をつけているのは、とにかく子どもの話をよく聞くことです。学校で何があったか、何が楽しかったか、他愛ない話をする中で、子どもたちの成長を実感できるのがとてもうれしい。家族のかけがえのなさに気づいて本当に良かったです。現在私の所属している整形外科のチームは、私の行動に影響されてかどうかは分かりませんが、家族や家庭も、仕事と同じく大事という考え方が広がってきているように感じます。

男性女性にかかわらず、医療の現場にいる人が自分らしい働き方をするには、働く人の「数を増やすこと」が最も重要だと思います。人数が多ければ、一時的に休む人がいても補い合うことができます。そのためにも、今は人材勧誘に力を注いでいます。整形外科を志すみなさん、ぜひ一緒に働きましょう!

北海道大学病院整形外科 助教
清水 智弘先生