各診療科における男女共同参画への取り組み紹介

脳神経内科は認知症や頭痛、脳卒中などのいわゆるありふれた神経疾患“common disease”や、脊髄小脳変性症や筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなどの稀な神経疾患や筋疾患を診療しています。脳梗塞、脳炎、ギランバレー症候群などの急性期医療を担う一方で、患者さんや家族に寄り添った慢性期医療も担っています。そのため脳神経内科医には、総合病院で急性期を中心に診療する医師、慢性期ケアやリハビリテーションを中心に診療する医師、クリニック等で外来診療を中心に診療する医師、在宅診療を行う医師など、多様な働き方がありますので、それぞれの医師の意欲や興味、ライフワークバランスを考慮して働き方を選択することができます。したがって、育児や介護などとも両立しやすい診療科であるとも言えます。また、神経診察から診断を考えるという医療技術を一度身につけると、その医療技術は一生ものの技術となるため、妊娠・出産や育児等で休職された医師も復職しやすく、生涯にわたって活躍できる分野のひとつとも言えます。
また、ほぼすべての脳神経内科医が所属する日本神経学会にはキャリア形成促進委員会があり、私はその委員長として、ライフイベントとキャリアの両立の支援、キャリア形成、バーンアウト対策にも積極的に関与しています。当教室においても、すべての医師が少しでも快適に診療と研究に専念できるよう環境整備に努めています。近年、企業等における人材育成において、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容・包括)(D&I)が取り入れられていますが、これは、性別や年齢、障害、国籍、ライフスタイル、職歴、価値観などによらず、それぞれの個を尊重し、認め合うことを指します。最近ではこれにエクイティ(公平性)が加わったDE&Iが行動標準になりつつあります。エクイティとは平等という意味ではなく、マイノリティもマジョリティと公平に並べるように、マイノリティの状況に合わせたツールやリソースを調整して用意し、成功できるようにすることを意味します。これは医療における人材育成の考え方にもあてはまるものと考えます。
脳神経内科専門医を志す世代の医師は、研修中に結婚、出産、育児などの大きなライフイベントを経験される方も多く、休職を要する場合も想定されます。当科および関連施設の脳神経内科でも妊娠・出産、育児などを経験する医師が増えてきています。当科では、勤務時間の調整が可能な“すくすく育児プラン”での雇用を用いることによって、性別に関わらず安心して子育てに時間を割けるよう工夫しています。また、関連施設の診療に対しても教室からの派遣医師数の増員、大学からの出張派遣などを行って、それぞれの医師の負担軽減を図ることにより安心して診療できる環境を整備するように尽力しています。脳神経内科に興味のある方はぜひ当ホームページもご覧ください(http://neurology.med.hokudai.ac.jp/~neuro-w/)。

                                                                                                        脳神経内科 科長
矢部 一郎

 

 

最近5年間のうちに、多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害(2023)、筋委縮性側索硬化症(2023)、重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群(2022)、頭痛診療ガイドライン(2021)筋強直性筋ジストロフィー(2020)、プリオン病感染予防(2020)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)(2019)で新たに診療ガイドラインが発行、改訂されました。脳神経内科領域においては生物製剤等による病態修飾療法の開発が進んでおり、アルツハイマー病、片頭痛、多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害などにおいてパラダイムシフトがおきています。さらには遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症などの稀少な遺伝性疾患に対する遺伝子治療や核酸医薬等の画期的治療法も開発されています。これまで難治性とされていた疾患においての治療も可能になり「治る脳神経内科」時代の幕が開きつつあります。